屈折矯正手術
屈折矯正手術とは、近視、乱視、遠視、老視などの屈折異常を治し、裸眼視力を改善させる手術のことです。カメラに例えてレンズに相当するのは、眼では角膜と水晶体です。
屈折矯正手術は角膜の屈折力を変えるLASIKなどの角膜手術と、水晶体あるいはその近くで屈折力を変える水晶体手術に分類できます。
1) 角膜手術 LASIK LASEK
2) 水晶体手術 ICL IPCL アドオンレンズ 白内障手術
レーシック(LASIK・LASEK)
LASIK(レーシック)
近視、乱視、遠視など、屈折異常の手術的治療法として世界的に普及しているのがレーシックです。
当院では2000年の厚生労働省による認可以来、一貫してその安全性および治療成績を追求しています。LASIKはLaser in situ keratomileusis の略で、「レーザーによるその場での角膜形成」という意味です。
レーシックでは角膜をエキシマレーザーで成形し、屈折矯正を行います。
ICLなどと異なり、眼内には一切触れることがありません。
白内障、隅角閉塞、角膜内皮障害などの心配がありません。
エキシマレーザーを当てる前に、フェムトセカンドレーザー装置で角膜の表面から100~120μの厚さのフラップを作り、持ち上げて角膜実質にエキシマレーザーを当てます。
フラップは戻すと角膜内皮の脱水作用により自然にくっつきます。
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フラップを作り、角膜上皮を保存することにより、術後早期(翌日)の視力回復が可能となり、術後の痛みも軽減されます。
円錐角膜、角膜変性など、角膜の異常があれば行えません。
矯正度数に見合った十分な角膜厚が必要です。
レーシックは-6D程度までの軽度近視の矯正に適しています。
矯正度数が大きくなるほど残余角膜厚が小さくなり、長期の矯正精度に問題が出てくる可能性があるからです。
レーシックで老眼の矯正はできません。
適応検査では安全にレーシックができるかどうかを調べます。
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LASEK(レーゼック)
LASEKではフラップを作らず、角膜上皮を剥いだ面(ボウマン膜)にエキシマレーザーを照射します。
アルコールを作用させて上皮を剥ぎます。表面から60μあたりでの照射ですので、残余角膜はレーシックよりも厚くなります。
角膜強度が保ちやすいので、格闘技をする方などに適しています。
しかし、上皮が再生するまで視力回復が遅れ、痛みも強いのが欠点です。
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ICL・IPCL(フェイキックIOL)
フェイキックIOL(有水晶体眼内レンズ)は、水晶体を残したまま、水晶体と虹彩の間に挿入する眼内レンズです。
透明水晶体の調節力を失うことなく視力矯正を行います。
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ICL(アイシーエル)
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ICLはImplantable Collamer Lensの略です。
日本で初めて厚生労働省の認可を得たフェイキックIOLです。
材質は親水性の柔らかい素材です。
レンズの中央に小さな孔があり、水晶体の前面の房水流量を確保することにより、白内障を防ぎます。
大きすぎるレンズを入れるとレンズの前凸が大きくなり、閉塞隅角、眼圧上昇、角膜内皮障害の危険があります。
小さすぎるレンズでは水晶体との距離が不十分となり、白内障を来します。
よって、適切なサイズのICLを選ぶ必要があります。
また、十分な前房深度がないと適応にはなりません。
まずは適応検査をお受けください。
ICLによって矯正可能な近視度数はレーシックよりも広いのが特徴です。
-6D以上の近視の矯正に適しています。
ICLでは軽度近視、遠視、老視の矯正はできません。適用年齢は21~45才です。
レンズの光学部径は6mmあり、白内障手術の眼内レンズとほぼ同等です。
まれにハロ、グレアを感じることがありますが、すぐに慣れます。
ICLのサイズ不良、アプサイドダウン、矯正不良、などあれば、摘出交換が可能です。
術後6週間以内であれば費用はかかりません。
ICLの待機期間は本検査後2週間~1か月程度です。
IPCL(アイピーシエル)
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IPCLはIntraocular Phakic Contact Lensの略で、ICLと同じくフェイキックIOLの1種です。
素材は親水性アクリルで、ICLよりも更に柔らかい素材です。
IPCLの特徴として、矯正可能範囲が広く、最高度近視、遠視にも対応しており、多焦点が用意されているので、老視の治療にも使えることがあります。
IPCLは本検査後海外へオーダーして制作しますので、待期期間が長く、約2か月ほどです。
LASIK・ICL・IPCLの使い分け
LASIKとICLでは多焦点がありませんので、老眼世代では近視が治っても老眼が残ります。
これらの手術は共に老眼のない、若年世代を中心に検討します。
若年世代でどちらを選ぶかは屈折度数、角膜厚および前房深度によります。
角膜厚が正常で(>500μ)、-6D以下の軽~中等度近視の場合、LASIKが第一選択になります。
-6D以上の近視で前房深度が2.8mm以上あればICLが第一選択です。
ICLの度数を越えた高度近視はIPCLを選択します。
矯正範囲 | 多焦点 | 年齢 | 可逆性 | |
---|---|---|---|---|
LASIK | +3~-6 | (-) | 20~ | (-) |
ICL | -3~-15 | (-) | 21~45 | (+) |
IPCL | 上記より広い | (+) | 21~ | (+) |
45才以上の年齢で、屈折異常とともに老眼も治したい場合、多焦点IPCLを考慮します。
ただし、この年代では白内障に罹患している可能性も出てくるので、水晶体の状態、調節力などから、IPCLにするか多焦点IOL(白内障手術)にするかを判断します。
多焦点IOLの術後などの微小な屈折異常の矯正はLASIKのよい適応です。
《タッチアップLASIKについて詳しくはコチラ》
タッチアップレーシック
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多焦点眼内レンズは、一般の単焦点眼内レンズと異なり、術後の裸眼視力が大切ですが、乱視や近視、遠視などの屈折異常が残れば満足な裸眼視力を得ることができません。
最新の検査機器や計算式を用いて眼内レンズの度数を決めても、過去に屈折矯正手術を受けられた方などでは、手術後思い通りの度数にならないことが多々あります。
また、乱視矯正についても同様です。既製品のため度数は0.5D刻みで、乱視の加入度数も限られていることを念頭に置いておく必要があります。
多焦点眼内レンズ挿入後、その人にとって「ベスト」な裸眼視力を得ようとすれば、屈折誤差を可能な限り取り除く必要があります。
微小な屈折誤差を手術的に治す方法としては「タッチアップレーシック」が最も安全で優れています。
タッチアップレーシックにより角膜の形を変え、遠視、近視、乱視を矯正することで良質な裸眼視力を得ることができます。
当院はフェムトセカンドレーザー、エキシマレーザーを所有し、レーシックに関して豊富な経験を積んでおります。
当院で多焦点眼内レンズによる白内障手術を受けられた方はもちろん、他院で受けられた方もぜひご相談ください。
AddOn(アドオン)眼内レンズ
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AddOn眼内レンズは、すでに白内障手術が済んでおり、眼内レンズの入った眼に対してもう一枚重ねて入れるレンズです。近視・遠視・乱視・老視を矯正できます。
また、単焦点眼内レンズが入っている眼に遠近両用のAddOn眼内レンズを入れることで、遠近両方をある程度メガネなしで見ることができます。
白内障手術後、ピントの合う距離に納得のいかない方や乱視をさらに矯正したい方、単焦点眼内レンズを入れたがやはり多焦点眼内レンズにしたい方が対象となります。
しかし、度数や乱視の追加矯正に対してはタッチアップレーシックの方が正確で安全なので、当院ではタッチアップレーシックを推奨しています。
角膜厚が薄い方や既にLASIKやRK等の角膜手術を受けた方などでタッチアップレーシックができない方、多焦点眼内レンズに変更したい方に対してAddOn眼内レンズを選択しています。
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近視・遠視の矯正
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近方視力を改善
ドイツの1stQ社製 レンズが届くまでにrefractive:4週間 toric、progressive:10週間を要します